性感染症
Sexually-transmitted-diseases
クラミジア感染症
近年もっとも感染者の多い病気です。性器クラミジア感染症は圧倒的に10代後半から30代前半の女性に多く、年々増加しています。感染した女性の80%程度に自覚症状がありません。たとえパートナーが一人でも、また、たった1回のセックスでも感染することがあります。
症状
おりものが増えたりセックス時や排尿時に痛みを感じたりします。 感染を放置していると子宮の入り口で炎症をおこし(子宮頚管炎)、さらに子宮の中や 卵管(子宮付属器炎)を通って、骨盤内に感染が進み(骨盤腹膜炎)、付属器に炎症性の癒着を生じることがあります。
またクラミジアは眼や口、のどの粘膜にも感染するため、風邪でもないのに ノドの不快感が続く方は検査をしたほうがよいかもしれません。
性器クラミジア感染症になっている方は、エイズに感染する確率が健康な人の3~5倍も高くなるともいわれています。
感染者も多い病気ではありますが、完治できる病気であると思うとクラミジアは怖いものではありません。ですが、不妊症の原因となりますので、検査・治療をすることが大切です。 そのために正しい治療が必要です。
治療
クラミジアの治療法はいたって簡単です。 細菌が入る病気なので抗生物質の入った薬剤を飲む事で治療ができます。
淋病
淋菌とよばれる細菌によって感染する性感染症(STD)で、性器クラミジア感染症と並んで、感染率の高い性感染症(STD)です。1回のセックスでうつる確率は30~50%ともいわれ、とても感染力が強いと言われています。抗生物質の普及で一時は減った淋病ですが、1993年ごろから、特に男性で増加の一途をたどっています。女性は無症状で気づきにくいため、知らずに感染源となって、男性感染者を増やしていると考えられます。
また、オーラルセックスの増加により、淋菌が咽頭から検出される症例が多く、男女問わず性器淋菌感染症患者の30%の咽頭から淋菌が検出されます。咽頭の淋菌感染は、治療後の性器感染の再発の原因となるので、感染機会がなく再発した場合は、咽頭感染も疑われます。
症状
女性は症状が出ないことが多いですが、おりものが増加、外陰部の痒み、腹痛を伴うこともあります。特に黄色いうみの様なおりものは注意が必要です。
感染後そのまま放置すると、激しい下腹部痛や発熱が起こり、卵管や骨盤内に炎症が広まって腹膜炎を合併し、不妊の原因になることもあります。また、妊娠・分娩の際に産道感染により、新生児結膜炎を引き起こすこともあります。その他には、頻尿、排尿痛、またフェラチオなどのオーラルセックスで淋菌が咽頭感染し、咽頭炎を起こしたり、結膜炎になることもあります。
治療
抗生物質の点滴をします。
外陰コンジローム
HPV(ヒトパピローマウイルス)がセックスのときなどに感染することで起きます。
このHPVは、ごくありふれたウイルスでセックスの経験のある女性なら、一度は感染することがあると言われています。
HPVは、現在90種類以上の遺伝子型に分類されており、その中で性器病変、あるいは性器から検出される型は40種類以上にも及びます。
この中でHPV16、18、31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、68、73、82型が、 子宮頸癌の高リスク型としてあり、中間リスク型としてHPV26、53、66型があります。
低リスク型のHPVには、6、11、40、42、43、44、54、61、70、72、81、89型があり、外陰コンジロームは、この中の6、11型の感染によって引き起こされます。
症状
潜伏期間は一定ではありませんが、一般的に感染後2~3ヶ月で症状が現れます。
女性では外陰部の皮膚と粘膜の境界にある湿った部分に弾力性のある小さなイボが出来ます。イボはどんどん増えていき、かたまりが大きくなるとカリフラワー状になることも。自覚症状はほとんどありませんが、かゆみやひりひりする感じがあったり、ほてる、性交痛を 感じる場合もあります。
治療
外用薬(ベセルナクリーム)
トリコモナス膣炎
性感染症(STD)の一つで、トリコモナスという原虫の感染によって起こる病気です。腟の感染症のうちでも頻度の高いもので、感染後1~2週間で発生しますが、感染を放っておくと炎症が卵管にまで及び、不妊の原因になったり、妊娠しても流産や早産をまねく恐れがあるので、治療が必要です。
多くはセックスでうつりますが、濡れたタオルやトイレの便座、お風呂でもまれにうつる場合もあります。
症状
女性の場合、臭いのある黄緑色や薄いうみのようなおりものが増えたり、性交痛、外陰部のかゆみなどがあります。
男性はほとんど無症状ですが、軽い排尿時痛がある場合もあります。
治療
外用薬や内服薬で治療します。
梅毒
梅毒トレポネーマという細菌により感染し、1回のセックスでうつる確率は15~30%と、強い感染力があります。早期に発見すれば完治します。
RPR・TPHA等を採血によって調べ、梅毒の診断をします。
症状
第1期
(感染して3週間後、男女とも性器に小豆大の硬いしこりができ、数週間で消失します。
太ももの付け根のリンパ節が腫れます。痛みはありません。
第2期
約3か月後、Tpが体内に広がって、全身および口腔内に発疹ができ、数週間から数ヶ月で消失します。感染力も強い時期です。
第3~4期
3~10年後、心臓や脳が侵され、死に至ります。(現在ではほとんど見られません)
※梅毒には、潜伏梅毒と呼ばれる症状のない例も多く存在します。
全ての梅毒感染で上記のような症状がでるわけではありません。
治療
抗生物質の内服薬で治療します。
B型肝炎
B型肝炎とは、B型肝炎ウイルス(HBV:Hepatitis B Virus)の感染によって起こる肝臓の病気です。
B型肝炎は極めて強い感染力を持っており、性交渉による感染が増えています。また、B型肝炎は急性肝炎、劇症肝炎、肝硬変、肝ガンなどの原因にもなり、感染後、放置しておくと致死率の高い疾病ですから、できる限り感染することを防ぎたいものです。
症状
B型肝炎はごくまれに、劇症化します。 劇症化の確率は1~2%ですが、致死率が5割を超える ので、年間で1,000人近い人が命を落としているのです。
治療
B型肝炎にはすぐれたワクチンがありますので、あらかじめ予防接種しておくことが推奨されています。
HIV感染症(エイズ)
HIVウィルスに感染し発病すると身体の免疫システムが壊れ免疫力が低下し様々な病気を併発し死に至ります。
エイズは感染者との握手やトイレ、お風呂を共有したり軽いキス程度では感染しませんが性行為や輸血により感染します。(通常のセックスだけでなくアナルセックス、オーラルセックス等でも感染の可能性はあります)
他の性感染症に感染していると感染する可能性は数倍になります。
潜伏期間は平均で10年(血液検査で反応がでるまで6~8週間)といわれています。
症状
感染しても数週間後の発熱・頭痛など風邪のような症状があるくらいで潜伏期間が数年~数10年と長いために感染に気付くまでに時間がかかります。
治療
現在、完全な治療法や特効薬はありませんが早期に発見し治療することで発病を遅らせることができます。
監修者情報
産婦人科医師 杉浦智子