婦人科一般
Gynecology-in-general
子宮筋腫について
子宮筋腫とは、女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)の影響を受け、主に子宮の筋肉組織の中、子宮の内側、子宮の外側にできる良性疾患であり、生殖年齢の女性の25%の割合で発生する疾患です。そのうち悪性化するのは0.5%以下と極めて稀でありますが、比較的30代~40代に好発すると言われています。
子宮にできる良性のこぶ(腫瘍)で、4人に1人の女性にあると言われています。子宮筋腫が閉経後に女性ホルモンが減少すると筋腫も縮小することから、女性ホルモンが深く関係していると考えられています。子宮筋腫は良性の腫瘍であり命に関わるような悪性のものではありません。
筋腫の大きさやできる場所によっては生理痛や過多月経・不妊症の原因になることがあります。
筋腫のある方すべてに治療が必要というわけではありません。
筋層内筋腫
子宮の筋肉内にでき、筋腫の70%を占め、最も多いタイプ。
小さいうちは症状も痛みもないが、大きくなると生理時の出血量が増えたり、生理中の痛み、吐き気、下痢などに苦しむ月経困難症を招く。
漿膜下筋腫(しょうまくかきんしゅ)
子宮の表面をおおう漿膜の下にでき、筋腫の30~40%がこのタイプ。子宮の外側に飛び出していて子宮の内側を圧迫しないため、かなり大きくなっても症状が現れず、気づきにくい。
粘膜下筋腫
子宮内膜のすぐ下にでき、発生頻度は10%と少ないが、症状が一番重いタイプ。
筋腫が子宮内部に突き出すため、小さくても生理時の出血量が増え、痛みも強くなる。不妊症の原因となることも多い。
症状
過多月経、貧血、レバー状の血の固まり、不妊、流産、腰痛、頻尿、便秘、下腹部痛、おりもの増加など
治療
薬物療法
①低用量ピル(OC)
避妊を目的にして用いる薬剤です。月経時の出血量が減少し月経痛を改善する効果があります。
子宮内膜を薄くする働きがあるため過多月経を改善することがあります。
②GnRHアナログ製剤(偽閉経療法)
のみ薬を毎日服用することにより女性ホルモンの分泌を抑え、偽りの閉経状態にもっていきます。
鎮痛剤・漢方薬
月経時の下腹部痛などの痛みを軽減するために処方します。
手術
筋腫だけを取り除いたり(筋腫核手術)、子宮ごと筋腫をとってしまう方法(子宮摘出術)があります。
子宮筋腫は、こうなったら手術が必要という基準はありません。基本的にはどのくらいの症状がつらいかによって、医師と相談して決めることになります。
経過観察中に手術が必要になった場合は提携病院などにご紹介いたします。
子宮内膜症について
子宮の内側は子宮内膜という組織に覆われています。子宮内膜の厚さは女性ホルモンの影響を受けて周期的に変化し、1ヶ月に1回厚くなったものが、はがれ落ちる現象が月経です。
本来、子宮の内側にあるべき子宮内膜が、子宮の外(腹膜・卵巣・卵管・腸など)に存在し、生理のように出血を繰り返すことで子宮とその周辺の癒着を引き起こし、様々な症状を現すのが子宮内膜症(チョコレートのう胞)です。
また、子宮の筋肉内に病変があるものは子宮腺筋症といいます。
子宮内膜症のおこる原因については現在までのところ明らかになっていませんが、閉経後の女性ではこの病気が見られないことから、女性ホルモンが影響を及ぼしていると考えられています。
症状
生理時の下腹部痛、腰痛、排便痛、性交時痛、不妊、月経異常(過多月経・不正出血)など
治療
薬物療法
① 低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤(LEP)
子宮内膜症や月経困難症の治療を目的としている薬剤です。
② 黄体ホルモン製剤
卵巣機能を抑制し、また、子宮内膜症病巣の増殖を抑制することにより子宮内膜症の症状を改善します。
③ GnRHアナログ製剤(偽閉経療法)
のみ薬を毎日服用することにより女性ホルモンの分泌を抑え、偽りの閉経状態に持っていきます。
④ 低用量ピル(OC)
避妊を目的にして用いる薬剤です。月経時の出血量が減少し月経痛を改善する効果があります。
子宮内膜を薄くする働きがあるため過多月経を改善することがあります。
鎮痛剤・漢方薬
月経時の下腹部痛などの痛みを軽減するために処方します。
手術
腹腔鏡下手術や開腹手術などがあります。
経過観察中に手術が必要になった場合は提携病院などにご紹介いたします。
子宮腺筋症について
本来子宮内腔にだけあるべき子宮内膜組織が、子宮筋層(子宮の壁に相当する部分です)内で発育する病気です。
子宮腺筋症では、子宮筋層内にある子宮内膜組織が生理周期に応じて出血をおこすために、その部分に出血に対する反応が起こり子宮壁は次第に大きくなります。
妊娠すると子宮腺筋症はある程度軽快すると言われています。
閉経すると生理がなくなりますから子宮は小さくなり、子宮腺筋症はやがて治癒します。
子宮筋腫
子宮腺筋症
症状
過多月経、生理痛、不妊症など
治療
薬物療法
① 低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤(LEP)
子宮内膜症や月経困難症の治療を目的としている薬剤です。
② 黄体ホルモン製剤
卵巣機能を抑制し、また、子宮内膜症病巣の増殖を抑制することにより子宮内膜症の症状を改善します。
③ 低用量ピル(OC)
避妊を目的にして用いる薬剤です。月経時の出血量が減少し月経痛を改善する効果があります。
子宮内膜を薄くする働きがあるため過多月経を改善することがあります。
鎮痛剤・漢方薬
月経時の下腹部痛などの痛みを軽減するために処方します。
卵巣腫瘍について
卵巣は親指大の楕円形の臓器で子宮の左右に 1 個ずつあります。卵巣は細胞分裂の活発なところなので体の中で腫瘍のできやすい臓器です。
卵巣腫瘍には、良性のものと悪性のものがあり、90%は良性の卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)と呼ばれ、悪性のものは1割程度だと言われています。
炎症をおこしている場合は痛みがあるため早期に気付くこともありますが、それ以外は腫瘍がかなり大きくなるまで本人にも自覚症状がほとんどないことが多いです。
嚢腫が小さく、症状がさほどないうちは経過観察が一般的です。
症状が強いものや、腫瘍の大きさが6~7cm以上となると手術となります。
病状にもよりますが、腫瘍部位のみ摘出する嚢腫核出術と、卵巣嚢腫が発生した方の卵巣を摘出する卵巣摘出術、卵巣と卵管を摘出する付属器摘出術の3つのうちからどれかを選択することになります。
次のような症状に気づいたら、早めに受診しましょう。
- 周囲の臓器を圧迫するため頻尿や便秘、下腹部痛や腰痛がでてくる。
- おなかが大きくなる。(悪性腫瘍では腹水がたまる。)
- 下腹部やわき腹にしこりが触れる
良性のものには
- 漿液性嚢胞腺腫
- 粘液性嚢胞腺腫
- 皮様嚢腫(デルモイド)(奇形腫)
- 卵巣子宮内膜性嚢胞(チョコレート嚢胞)
子宮がんについて
子宮がんは子宮の入り口にできる「頸がん」と子宮の中にできる「体がん」があります。
子宮頸がん
20~30歳代の女性に多く、HPVというウィルスの感染が原因で、発症することが明らかになっています。そのためウィルス感染の早期発見をすることで早めに対策を立てることができます。
但し、HPVというウィルスに感染しても実際に子宮頸がんになる方は少数ですので、あわてる必要はありません。
2009年12月より、日本でも子宮頸がん予防ワクチンが接種できるようになり、2021年2月より新たに9価ワクチンが接種できるようになりました。
いずれも3回の接種で長期にわたる感染予防ができますが、ワクチンでは予防できない高リスク型HPVもあります。つまりワクチン接種をしても、子宮頚がんになる可能性は低くなりますが、子宮頚がんになる可能性はあるということです。
早期発見と治療のために、ワクチン接種とあわせて1年に1回の子宮頚がん検診をおすすめします。
☆ともこレディースクリニックでは自費(任意接種)の頸がんワクチンのみの取り扱いとなります☆
シルガード9(任意接種9価) | |
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予防可能なHPVの型と割合 | 高リスク型:16、18、31、33、45、52、58 低リスク型:6、11 約90%以上 |
接種回数 | 3回 |
2回目以降の接種間隔 | 2回目:初回から2ヵ月後 3回目:初回から6ヵ月後 |
接種対象者 | 9歳以上の女性 |
料金 | 33,000円/回 |
予防方法 | 希望接種日の10日前までにお電話にてご予約ください。 接種日までに「ワクチンQダイアリー」 登録〜予診票情報の入力まで済ませておいてください。 事前登録ができなかった場合は、ご来院時に受付へお申し出ください。 ご登録方法の詳細は「こちら」 ワクチンの詳細については「こちら」をお読みください。 |
子宮頸がんワクチンはHPVの感染を予防するものであり、すでに感染しているHPVを治療する効果はありません。
そのため、性交渉を行う前に接種することが最も効果的です。
原因
子宮頸がんはその他のがんと異なり、原因が解明されています。子宮頸がんの原因は、ほぼ100%がヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染であることが明らかになっています。
子宮頸がんの原因である発がん性HPVは、皮膚と皮膚(粘膜)の接触によって感染するウイルスで、多くの場合、性交渉によって感染すると考えられています。発がん性HPVは、女性の約80%が一生に一度は感染していると報告があるほどとてもありふれたウイルスです。このため、性交渉のあるすべての女性が子宮頸がんになる可能性を持っています。
HPVウイルス感染の予防として、HPVワクチン接種が奨められております。
※平成22年4月1日から名古屋市の子宮がん検診自己負担金が500円になりました。 くわしくは名古屋市ホームページでご確認下さい。 ⇒ 名古屋市ホームページ「子宮がん検診」
症状
子宮体がん
40歳代後半〜60歳代の女性に多く子宮体がんは子宮内膜がんとも呼ばれるように、胎児を育てる子宮の内側にある子宮内膜から発生する病気です。一方、子宮腟部や頸管の上皮から発生したがんが子宮頸がんです。 同じ子宮のがんであっても、 子宮体がんと子宮頸がんは、診断・治療・予後においてすべて異なりますので、子宮体がんと子宮頸がんの違いを正しく理解することが大切です。
原因
子宮体がんの詳しい原因は不明ですが、女性ホルモン(エストロゲン)の増加が関連があることが分かっています。
エストロゲンの機能のひとつとして子宮内膜の増殖刺激があります。発生率のピークは60~70歳ですが、5%弱では40歳以前に発生しています。子宮体がんになる危険性は、エストロゲンの分泌が増加している女性ほど高いことがわかっており、肥満、高血圧などが子宮体がんに関連があることもわかっています。この他にも未経産、不妊、糖尿病の女性も子宮体がんの危険因子となっています。
症状
異常子宮出血
月経周期の異常
閉経後に性器出血や点状出血がみられる
40歳以上の女性で、異常に長い、多量の、または頻発する出血がみられる
内診上、特に病気の初期段階では、異常が認められないことがよくあります。
危険が高くなる条件が特定されているので、その条件に該当する女性は医師の指示をしっかり守ることが重要となります。こまめに内診と検査を受けましょう。
卵巣がん
卵巣は子宮の両わきに各ひとつずつある親指大の楕円形の臓器です。生殖細胞である卵子がそこで成熟し、放出されます。それとともに周期的に女性ホルモンを分泌しています。
卵巣にできる腫瘍の85%は良性です。卵巣の腫瘍はその発生する組織によって大別されます。最も多いのは、卵巣の表層をおおう細胞に由来する上皮性腫瘍で、この中には良性腫瘍と悪性腫瘍(がん)の他に良性、悪性の中間的な性質をもつ腫瘍(中間群)があります。上皮性腫瘍はさらに5つの細胞型に分かれ、それぞれ異なった性格をもっています。上皮性のがんは卵巣がんの90%を占めています。
原因
卵巣の悪性腫瘍のうち胚細胞性のものやホルモンを産生する腫瘍の発生原因やリスク因子は現在まで明らかにされていません。
一方、表層上皮由来のがんのリスク因子については3つあります。
①内分泌因子
排卵のときに傷ついた表層上皮が何らかの機転で卵巣の実質内へ取り込まれ、そこからがんが発生すると考えられていますので、排卵の回数が多いほど卵巣がんのリスクが高まると考えられています。未妊や排卵誘発は卵巣がんに対して促進的に働き、経口避妊薬(ピル)による排卵の抑制は卵巣がんの発生を抑制すると考えられており、最近の少産傾向による妊娠・分娩数の減少や授乳期間の短縮により、妊娠・授乳による無排卵期間の短縮のため卵巣がんの発生が増加する傾向にあるとされています。
②環境因子
動物性脂肪の多量の摂取や喫煙があげられております。
③遺伝因子
卵巣がんを発生しやすい遺伝子異常をもつ家系のあることが報告されています。
症状
卵巣は膣を通して外界と交通している子宮と異なり、骨盤内に存在しているため症状が出るのが遅く、進行してはじめて診断されることが少なくありません。
統計的には、お腹が張る、腹痛、胃腸障害、頻尿(尿が近い)、体重減少などが多い症状ですが、これらは他の病気でもしばしば見られるもので、卵巣がんに特異的な症状ではありません。
最近では上に挙げた症状のため受診し、エコー検査で初期の間に発見される卵巣がんが増えてきており、原因のはっきりしないお腹の張りや腹痛などの症状をみたときはエコー検査を受けることが卵巣がんの早期発見につながる可能性があります。
日本における卵巣がんの発生頻度は1985年の成績で人口10万人あたり5.7で欧米(米国:13.3、英国:11.1、ドイツ:11.6、スエーデン:14.9)と比べて低いといわれていますが、最近の少産傾向や食生活の欧米化などにより増加傾向にあると考えられています。
子宮頸管ポリープについて
子宮の入口の管の部分を子宮頸管と呼びます。その部位の細胞が何らかの理由(炎症の可能性あり、セックスは無関係)で増殖し、しずくのように子宮口を経由して外に飛び出してくる良性腫瘍(しゅよう)で、大きさは米粒~そら豆ぐらいと様々です。ポリープ自体がガン化することはありません。
症状
無症状のことも多く、婦人科検診時に発見されることもあります。
痛みはありませんが簡単に出血するようになります。おりものに血が混じったり、性交による刺激や激しい運動などで出血しやすくなります。
治療
子宮頸管の場所は子宮の入り口に当たります。根元が細いものであれば外来で鉗子という器具でたいした痛みもなく取ることができますが、根元が太い場合は切除に出血をともなうのでレーザーで切除することになります。手術は短時間で終わる簡単なものです。
※子宮頚管ポリープを取り除いてもまた繰り返し再発してしまうことはよくあります。定期的な検診をおすすめします。
バルトリン腺のう胞(膿瘍)について
バルトリン腺はセックスがスムーズにできるように性的に興奮した時に粘液を分泌して外陰〜膣に潤いをあたえます。バルトリン腺は膣の入り口の時計方向の5時と7時の方向にあります。通常の状態では触ってもどこにあるのかは分かりません。
バルトリン腺の出口が何らかの原因で閉鎖してしまうと、バルトリン腺の中でつくられた分泌物が外へ流れることができなくなります。このため、バルトリン腺が拡大してのう胞を形成します。バルトリン腺のう胞の中に感染を起こした場合に「膿瘍」となります。
治療
①穿刺(切開)→内容物吸引、抗生物質投与
膨らんだ部分を注射針で穿刺(切開)し、内容を吸引します。その後抗生物質を投薬し、感染の治療を行います。基本、この施術適応はゴルフボール大以上のサイズになります。
②開窓術(造袋術)
バルトリン膿瘍部分の皮膚を切除し、内部とつながるようにする小手術になります。内部に貯まった膿を持続的に外に排出することで、感染症状が落ち着いてきます。当院では施術しておりません。必要となった場合は提携病院などにご紹介いたします。
監修者情報
産婦人科医師 杉浦智子